言葉を話すという行為は、思考した言葉を音に変換していく作業であり、精神活動と身体活動
の両面を合わせ持っています。
吃音で問題になるのは、あくまでも「言いにくさ」という感覚です。「言いにくさ」を起こす
感覚がどこから来るのかと言えば、咽喉に力が入った状態で無理に発語しようとするからで
あり、潜在意識に間違った発語パターンがインプットされてしまった結果、条件反射として
吃音が起こるのです。
心理的要素である苦手意識や発語に対する予期不安は、「言いにくさ」の感覚を持ちながら
発語することによって、実際に言葉が出にくかったり、詰まったりするという経験を繰り
返す間に生まれてくるものです。さらに、電話や人前で吃るのは、自分の弱点と考えている
吃音を他人に知られたくないという心理状態や自己防衛本能という深層心理が働くことに
よって、苦手意識や予期不安がより高まり、交感神経が過剰な緊張を起こすからです。
したがって、吃音を治す為にまず最初にしなければならないことは、「言いにくさ」のある音
が、間違った発声法になっているいうことを認識し、腹圧をかけながら発語することで咽喉
周辺に入る無駄な力が抜けていくという感覚を単音腹圧発声法という方法を用いて実感する
ことです。咽喉に力が入り、腹圧がかからない発声法がいつの間にか習慣化してしまい、
悪い発声法が身についてしまったために、「言いにくさ」を感じるのです。
腹圧をかけながら咽喉周辺に入る無駄な力を抜く単音腹圧発声法を訓練すれば、不思議と
「言いにくさ」を感じることなく、音(声)を出せるようになります。
「言いにくさ」が無くなれば、しっかり音(声)が出せるようになるのですから苦手意識や
予期不安も解消します。
人前であがるのは、吃音者だけではありません。注目が集まれば誰でも緊張するのは当たり
前のことなのです。ただ、緊張しても正しい発声法になっているので、言葉が出るだけのこと
なのです。そして、誰でも人前に出ることが頻繁になれば、場馴れをして、緊張の度合いも
下がってくるのです。