「わたし」の「た」が言えて、「たなか」の「た」が言えないのはどうしてか?
日本語構造と吃音現象の中でも触れていますが、「た」の音を苦手とする吃音症状を持つ
人のほとんどが、言い始めの「た」や文節の中の一音目の「た」を苦手としますが、
単語の2音目以降の「た」は苦手ではなく普通に話せます。
これは発語リズムという観点から捉えれば、理解しやすいと思います。
「わたし」という単語は3音であり、3拍のリズムを持っています。「わ」の音に苦手意識
はないので抵抗なく「わ」の音が出ます。音は息の流れであり、息が流れている以上無駄な
力を入れなくてもすみます。むしろ、無駄に力を入れることの方が難しいと言ってもおかし
くありません。
一方、一音目の「た」は息の流れはありません。オーバーに言えば予期不安により体が硬直
してしまいます。
特に発音器官の音を作る部分の咽喉周辺に意識と無理な力が入ってしまいます。
この状態を脱却するためには、「吸う息」で息の流れを作ることです。
つまり、素早く軽く息を吸って、次にその反動を利用して吐く息に音を乗せていけばいい
のです。
あるいは、息を吸わなくても、腹圧をかけながら音を出せば、息が出るので、音も簡単に
出ます。
この二つの方法、ブレス法と腹圧法で最初の音を出していけば、言いにくい音も出せるのです。
そして、この二つの方法は普通に話せる人が無意識の内に、普通にやっている方法なのです。
吃音症状で困っているみなさん、言いにくさは体が作っているといっても過言ではありません。
言いにくさを治すには、体を使って息の流れを意識的に作っていくことです。
正しい発声フォームと正しい発語フォームを身につけることで、息の流れが作れるので
「言いにくさ」は解消するのです。
吃音を克服するために必要なことは発声・発語訓練をして、ブレス・声・リズム・テンポ・
タイミング等をコントロールする力を段階的に身につけていくことなのです。